たより5 咀嚼のすすめ①
健康のために「バランスの良い食事をしましょう」とはよく言いますが、「噛むこと」の重要性を知らない方が多いように思います。
「噛むこと」について整理してみましょう。
噛むことの効用として「8020推進財団」が掲げている標語がわかりやすいのではじめに紹介しておきます。
「卑弥呼の歯がいーぜ」
ひ…肥満を防ぐ
み…味覚の発達
こ…言葉の発音がはっきり
の…脳の発達
は…歯の病気を防ぐ
が…がんを防ぐ
い…胃腸の働きを促進する
ぜ…全身の体力向上と全力投球
この標語だけ見ても噛むことの大切さがわかりますが、もうすこし詳しく見ていきましょう。
よく噛むとどんないいことがあるか?
1.あごが丈夫になる
噛むという力が加わることにより、栄養が細胞に吸収され、あごが丈夫になります。
2.歯が丈夫になる
噛むという力が加わることにより、歯とあごの骨をつないでいる歯根膜細胞が活性化し、歯が丈夫になります。
3.消化器の負担を軽減する
よく噛まないで食べると、消化器の不調を招きます。食べものをよく噛みくだき、唾液と混ぜることで、消化器の負担を軽減できます。
また、口腔内で味わって食べることは、消化液の分泌に影響するので、おいしいと感じながらゆっくり食事を楽しむことで、消化吸収が良くなります。
4.肥満防止・ダイエット
ゆっくりよく噛むという方法は、肥満治療にも使われています。
食事をすると、血糖やインスリンが上昇し、脳内に神経性ヒスタミンなどの物質が増加し満腹中枢(視床下部腹内側核)が刺激され、満腹感が得られます。
満腹中枢が感知するまでに20~30分かかるのでゆっくりと食べることが大事です。
反対に、よく噛まずに早食いすると満腹中枢が感知するまでにたくさん食べてしまい肥満になりやすくなります。
さらに、噛むと体温が上がり脂肪が燃焼されますが、よく噛まないと脂肪が燃焼されず蓄積され肥満になりやすくなります。
噛むと交感神経が活発になり、エネルギー代謝も上がります。
5.脳の老化予防・記憶力アップ
噛むことで脳の血流を促すことができます。
記憶と関係のある脳の中の海馬という部分は、噛むことで活性化します。
6.学習能力の向上
よく噛むと脳の血流が良くなり脳の働きが良くなります。
また、FGFなど記憶と関係のある物質が増加します。
7.美しくなる
よく噛むと、顔の筋肉を動かし、血流も良くなるので、美しくなります。
8.ストレス軽減
噛むことで、ストレスを感知する脳内の扁桃体を抑制することができ、また、噛むことで増えたコレシストキニンという物質は、ストレスによって増えた脳内のドーパミンを抑制することができますのでストレス軽減につながります。
9.視力改善
噛むことで、ピント合わせに必要な筋肉の衰えを防ぎます。
10.異物を感知する
嚥下する前に、口腔内で異物や有害物質を感知することができます。
よく噛まないで飲み込んでしまうと異物や有害物質を取り込んでしまう危険性があります。
11.食感
噛むことで食べ物の食感を楽しむことができます。
12.運動能力向上
運動能力が高い人は、噛む力も強いのでスポーツをする上で歯はとても大切です。
最近、あごが小さい人が多くなったように思いますが、柔らかい食べ物が多くなり、よく噛まなくなったのが原因ではないかと思います。
ただ、食べ物を食べればいいというのではなく、そこに噛むという力を加えることにより体全体の機能に影響するのですね。
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